水を引く、汲む、買う。意外と見えにくい家庭の水環境

「うちは蛇口をひねれば水が出ます。でも、井戸を使っている家や、水を買っている家が、毎日どんな水を飲んでいるのかは、正直よく分かりません。」
「確かに気になりますね。では、解説します。」
まずは自己紹介
弊社、株式会社メイプル・リンクは、 創業35年のセントラル浄水器メーカーです。セントラル浄水器『ソリューヴ』の企画・製造・販売を行なっております。長年セントラル浄水器の販売を行なっている弊社が、気になる疑問についてお応えします。
一杯の水は、見た目では見分けがつきません
コップに注いでしまえば、水はどれも透明です。水道の家に住んでいる人からすると、井戸水での生活はふだん知る機会がありません。反対に、井戸水で暮らしている人は、蛇口の水道水に何が残されているのかを、毎日意識しているわけでもありません。店で水を買っている人は、浄水器が家全体を浄水する生活のイメージはつきにくいですし、購入したボトルの水が天然の水だと思っていたりもします。
つまり、見えているのは、自分の家が選んでいる水だけです。水道を引いているのか、井戸を汲んでいるのか、容器で買っているのか。他の環境はなかなか見えません。自分が飲んでいるもの以外にも、選び方はあるということで、普段分からないそれぞれの水環境について見ていきます。
「同じように飲んでいても、家によって水環境は違いますよね。」
水を引く、汲む、買う
引く水は、市町村の水道が送ります
水道水は、川やダム、湖、地下水などを、市町村などの水道事業が取水して、浄水場で処理し、水道管で家まで送った水です。ご家庭では、使った量に応じて水道料金を払います。マンションでは、引っ越したその日から蛇口が出ますが、新築戸建てなどでは水道引込み工事の工程があるのでイメージは違うものになります。
新築戸建て住宅の水道引込み工事ってなに?そして、浄水場を出た時点で水の仕事が終わるわけではありません。水道水は公衆衛生の観点で家に届くまでの管内で塩素を残したまま送ります。水道法では、みなさんが使う蛇口(給水栓)で、遊離残留塩素を 0.1mg/L 以上に保つことが求められています。では、濃さの上限は法令で決まっているのか。そのあたりは、残留塩素の基準をまとめた記事に書いています。
残留塩素の基準値に上限がないは本当!?汲む水は、その家が土地の水を使います
井戸水は、その土地の地下水を、その家がポンプなどで汲み上げて使う水です。水道が来ていない場所で、井戸だけを飲み水にしている家もあります。水道も来ているのに、飲み水は井戸、ほかは水道と分けている家もあります。東京都の保健所では、前者を専用井戸、後者を併用井戸と呼んでいます。
参照:東京都南多摩保健所 飲用に供する井戸等
飲用に使う井戸は、水道事業の蛇口とは管理の仕方が違います。国の飲用井戸等衛生対策要領では、設置した側が井戸とその周辺を管理し、水質の検査を受けることになっています。その水がどうかは、その井戸の検査を見て判断するものです。
買う水は、容器に入って届く水です
スーパーのペットボトルも、宅配のウォーターサーバーも、ここでは「買う水」です。水道料金とは別の支払いで、おもに飲み水や料理の分を受け取っています。お風呂や洗濯まで、その水でまかなっているご家庭は、多くはありません。
| 呼び方 | 水が家に届くまで | 管理する側 |
|---|---|---|
| 引く | 水道事業が処理して、管で送る | 水道事業者。ご家庭は料金を払う |
| 汲む | 土地の地下水を、その家が汲む | 設置したご家庭。検査もそちら |
| 買う | 容器やサーバーで届く | 製造した事業者。届くのは飲み水が中心 |
「井戸水を使っていないと井戸水のことはわからないですし、スーパーなどで容器を持ち寄って水を買っている光景を見かけますが、自分がその環境にいないと具体的な中身はわからないですよね。」
井戸は、特殊な家だけのものではありません
都市部で水道だけを使っていると、井戸はどこか特別な暮らしに見えます。ただ、水道の普及率を見ても、井戸がどれだけ使われているかは出てきません。普及率は、水道が届いている人口の割合です。水道と井戸を両方使っている家も、この数字の中では水道の側に入ります。
生活に使う水の約2割は、地下水です
井戸の有無より、地下水がどれだけ使われているかを見た方が近いです。国土交通省の水資源の統計では、平成28年度の生活用水は年間147億立方メートルで、そのうち地下水が29.8億立方メートル、依存率は20.3%でした。生活用水は、家庭の飲料や調理、風呂だけではありません。それでも、暮らしに回る水の量の約2割が地下水です。
参照:全国さく井協会(国土交通省「日本の水資源」令和2年版より) 地下水利用の現状
もう少し新しい都市用水の数字もあります。生活用水と工業用水を合わせた2022年の全国の取水量は、年間242.2億立方メートルです。うち地下水は55.5億立方メートルで、22.9%です。国土交通省は、生活用水、工業用水、農業用水、養魚などに地下水が使われている、とも整理しています。令和元年の都市用水と農業用水では、地下水は年間約86億立方メートルで、全体の約11%でした。
参照:国土交通省 地下水の利用(2022年の都市用水)
参照:国土交通省 地下水利用の現状
この割合は、家の井戸の軒数ではありません。水道の水源が地下水の地域も含まれます。水源の違いは、別の記事にまとめています。そのうえで、地下水を汲んで使う量は、まれな家だけの大きさではありません。水道の家から見えないだけで、地下水の利用が消えたわけではありません。
【水源】水道水はどこからくるの?実は意外と身近な井戸水のある風景
家庭の外でも、水道ではなく井戸や地下水を選んでいる仕事があります。味や仕込みのために、その土地の水が要るからです。
蕎麦では、茹でる水、締める水、だしに、井戸を使っている店があります。京都・桂の隆兵そばは、厨房の裏の井戸を、魚や野菜を洗う水から、蕎麦を茹でて締める水、だし、お茶まで使っている、と書いています。
参照:隆兵そば 自慢の井戸水
珈琲でも、家に残る井戸で淹れている店があります。奈良のTsuKuRuBa竹蔵は、昭和4年から続く家の井戸水で、一杯ずつハンドドリップしている、と案内しています。
参照:TsuKuRuBa竹蔵 珈琲スタンド
酒蔵の仕込みに、井戸の水を使っている例があります。広島・西条の賀茂鶴酒造は、蔵ごとに仕込み用の井戸があり、地元の人がペットボトルを持って汲みに来る、と話しています。同じ山の伏流水でも、井戸の位置で水質が違う、ともしています。2025年には、兵庫県香美町の寺の井戸水で、香住鶴が限定の日本酒を造っています。海から近くても塩分がない軟水だった、と社長が話しています。
参照:賀茂鶴酒造 未来は歴史の中にある
参照:朝日新聞 お寺にある井戸水使った吟醸純米酒 香住鶴が「洗心甘露水」限定発売
どの店も、水道が無いから井戸、という話ではありません。水道が使える場所でも、仕事の水に井戸を選んでいます。家庭の井戸が珍しいものに見えても、地下水は店の仕込みや、近所の人が汲みに来る水として、今もそばにあります。
「井戸は特別な家の話だと思っていました。お店でも、水道とは別に井戸を使っているんですね。」
買う水は、天然水の一種類ではありません
ペットボトルの水を、まとめて「天然水」と呼ぶことがあります。お店で見かける水の多くが、そう呼ばれているように感じるからです。ただ、表示のルールでは、容器の水は一つの種類にはまとまっていません。
農林水産省の「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」では、品名が次の四つに分かれています。分類があるということは、売られている水の中身が、もともと一つではないということです。
- ナチュラルウォーター:特定の水源から採水した地下水で、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理をしないもの
- ナチュラルミネラルウォーター:ナチュラルウォーターのうち、地層の中で無機塩類が溶けている地下水
- ミネラルウォーター:ナチュラルミネラルウォーターを原水にして、ミネラルの調整や、複数水源の混合、ばっ気などをしたもの
- ボトルドウォーター(飲用水):上の三つ以外。水道水、蒸留水、河川の表流水などもここ
参照:全国清涼飲料工業会 ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン
見る場所は、ラベルの品名と、原材料名のかっこ書きです。鉱水、湧水、浅井戸水、水道水、と原水の種類が書かれています。水道水を容器に詰めて売っているものも、このガイドラインではボトルドウォーターに入ります。
宅配のウォーターサーバーも、この「買う水」です。届き方はボトルと違っても、家の給水管の水が入れ替わるわけではありません。キッチンで使う分を、容器で受け取っているという点は同じです。
「天然水という一言では、ボトルの中身は決まらないんですね。」
経路が違うとわからない それぞれの水環境
水道の家では、井戸の点検も、年に一度の水質検査も、ふつうは経験しません。井戸の家では、蛇口まで塩素を残すという水道のやり方を、自分の水では使いません。容器の水を買っている家でも、お風呂や洗濯までその水だとは、なかなか思いません。
水道の側で見えにくいのは、残留塩素です。消毒のために残しているので、カルキのにおいとして感じることがあります。まずくするために入れているわけではありません。家に着くまで、水を衛生的に保つためのものです。
井戸の側で見えにくいのは、管理がご家庭に残ることです。色、におい、味、濁りに異常があれば飲むのをやめて、検査をします。有機溶剤など、その土地で気になる項目を検査に足すかどうかも、周辺の状況によります。
買う水の側で見えにくいのは、届く範囲です。ボトルもサーバーも、向いているのは飲み水と料理です。シャワー、洗濯、トイレの水は、その家が引いている水道か、汲んでいる井戸のままです。
【注意】セントラル浄水器を井戸水で使える?
「実は我が家以外のことってほとんど知らないということですね。」
地下水には、その土地の環境が影響する
井戸は、浄水場を通る前の地下水に近い水です。雨が地表からしみ込み、その土地の地層を通ってきます。工場の周辺や、むかしの土地利用によっては、土壌にあったものが地下水に移ることがあります。有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)も、場所によっては地下水の調査項目になります。
同じ物質は、水道の蛇口の水からも、基準の数字以下で出ることがあります。令和2年4月から、水道水では水質管理目標設定項目、河川や地下水では要監視項目として、どちらも PFOS と PFOA の合算で 50ng/L という目安が置かれていました。令和8年4月からは、水道水のこの値が水質基準になっています。基準を満たしていることは、その物質がゼロだという意味ではありません。数値が出ていても、基準を超えていなければ、その基準では適合です。
東京都水道局は、原水、浄水、給水栓を年4回調べ、給水栓では 50ng/L を大幅に下回っている、としています。高くなりそうなときは、濃度の高い井戸からの取水を止めています。区部のように川の水を水源にする系統と、井戸を水源にする系統では、検査の出方も同じではありません。
参照:東京都水道局 水道水の安全性(有機フッ素化合物について)
横浜市水道局は、市内3つの浄水場の水道水と、処理する前の原水について、これまで 50ng/L を超えたことはない、としています。令和3年度以降、PFOS、PFOA、PFHxS は、市が正確に測れる最小の濃度(定量下限値)を下回った、とも公表しています。濃度の高い水が浄水場に入ったときの手段の一つとして、活性炭で処理できる、とも書いています。
参照:横浜市水道局 水道水中の有機フッ素化合物(PFAS)について
参照:横浜市水道局 水道水中の有機フッ素化合物(PFAS)の検査結果について
参照:国土交通省 水道におけるPFOS及びPFOAについて
「水道も、基準の内側だからゼロというわけではないんですね。」
引いた水を、家の入口で変えるという選択

セントラル浄水器は、蛇口の先に付ける浄水器や、容器で水を買う方法に比べると、まだ一般的な設備とは言えません。置く場所がそもそも違います。

『ソリューヴ』は、水道メーターの住まい側、家に入った直後の給水管に取り付けます。水道事業が送ってきた水を、家の入口でろ過してから、家の中に通します。その先のキッチン、お風呂、シャワー、洗濯に、同じ浄水が届きます。容器の水のように、飲み水の分だけを買い足す方法ではありません。
この付け方が向くのは、水道を引いている家です。井戸の場合は、飲用できる水質であることが先になり製品の前提が違います。
【専門】水道メーターボックス直後に設置する浄水器を解説 【完全解説】セントラル浄水器の8つのデメリット
「いかがでしたか。個々の家庭によって水環境は違うことがお分かりいただけましたでしょうか。」
「はい。よく分かりました。」
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