「水道水を飲まないで」：全米で広がるPFAS汚染と日本のこれから

作成日 : 2025-05-02

「PFASについてアメリカの事例があれば教えてほしいです。」

「確かに気になりますね。では、解説します。」

まずは自己紹介

弊社、株式会社メイプル・リンクは、創業33年のセントラル浄水器メーカーです。セントラル浄水器『ソリューヴ』の企画・製造・販売を行なっております。長年セントラル浄水器の販売を行なっている弊社が、気になる疑問についてお応えします。

PFASとは？「永遠の化学物質」の特徴と使われ方

「蛇口の水を飲まないで」。そんな突然の忠告が、隣人から届いたらどうでしょうか。普段何気なく使っている水道水が、実は健康を脅かす化学物質に汚染されているかもしれない――そんな不安が現実のものとなったアメリカの事例が注目を集めています。この化学物質は、有機フッ素化合物の総称である「PFAS（ピーファス）」。水や油をはじく特性から、調理器具や衣料品、消火剤など幅広い製品に使われてきた一方で、自然界で分解されにくく、体内に蓄積される「永遠の化学物質」として、健康や環境への影響が懸念されています。

アメリカ中西部ミシガン州にある、人口約2千人の小さな町に衝撃が走りました。

住民のタミー・クーパーさん（39）が隣人から「水道水を飲まないで」とテキストメッセージを受け取ったのは2018年7月26日の夕方のこと。

水道のパイプが壊れて細菌が混入したのかと思い、「煮沸するようにってこと？」と尋ねると、「いいえ、水は一切使えないよ」と返ってきました。

すぐに検索し、市のFacebookで「PFAS（ピーファス・有機フッ素化合物の総称）」が水道水に混入しているというお知らせを目にしました。

「PFASって何？」

その晩に地元自治体の記者会見もあると知り、タミーさんは感じました。「これは大変なことが起きている」

withnews「「水道水を飲まないで」隣人からチャット　住民を襲った健康への不安「PFASなんて知らなかった」　全米で危機感高まる契機に」より引用

参照：朝日新聞　PFASクライシス　向き合った世界の現場から

参照：朝日新聞　PFASの血中濃度、どう向き合う？　全米平均の750倍の女性は

1万種類以上あるPFAS、その特性とは

PFASは、有機フッ素化合物の総称で、1万種類以上の化学物質を含むとされています。水や油をはじく、熱に強い、腐食に耐えるといった特性から、さまざまな製品に活用されてきました。たとえば、フライパンの焦げ付き防止コーティング、防水加工された靴や服、泡消火剤、さらには化粧品や半導体まで、数千もの製品に使われています。この便利さから、長年にわたり私たちの生活に深く浸透してきたのです。

しかし、PFASは自然界でほとんど分解されないという特徴を持ち、環境中に長期間残留します。さらに、生物の体内に蓄積されやすく、人の健康に影響を及ぼす可能性が指摘されています。米疾病対策センター（CDC）によると、PFASのいくつかの種類は、コレステロール値の上昇、肝臓機能の異常、生まれた子どもの体重低下、さらには腎臓がんや精巣がんとの関連が示唆されています。こうしたリスクから、PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、欧米を中心に規制の動きが加速しています。

日本での規制の現状

日本では、2026年4月からPFASが水道水の「水質基準」に追加され、規制が強化される見込みです。この動きに伴い、水質検査が拡大すれば、新たな汚染が発覚する可能性も高まります。すでに一部の自治体では、地下水などの調査で基準を超えるPFASが検出されており、今後、国民の関心が一気に高まるかもしれません。

「PFASは日本でも大きな問題に発展していますよね。」

アメリカでのPFAS汚染：住民を襲った衝撃

ミシガン州の小さな町で起きた出来事

アメリカ中西部ミシガン州にある、人口約2,000人の小さな町で、2018年7月に衝撃的な出来事が起こりました。ある住民が、隣人から「水道水を飲まないで」とテキストメッセージを受け取ったのです。最初は水道パイプの破損による細菌混入を疑いましたが、事態はそれよりも深刻でした。市のFacebookページを確認すると、水道水に高濃度のPFASが検出されたという衝撃のお知らせが掲載されていたのです。

「PFASって何？」その夜、住民たちはインターネットで情報を検索し、地元自治体の記者会見に注目しました。この町では、初めて実施されたPFASの水質検査で高濃度の汚染が発覚し、全米でPFAS汚染への危機感が高まるきっかけの一つとなりました。住民の多くは、それまでPFASという存在すら知らなかったと語ります。特に、幼い子どもを持つ親たちは、母乳や子どもの体重への影響を心配し、不安に駆られました。

健康への不安と向き合う住民たち

汚染された水道水を飲んだり、食器洗いやシャワーに使ったりしてきた住民たちは、「自分や家族の健康は大丈夫なのか」という大きな不安に直面しました。PFASの血中濃度を測定することで、体内にどれだけ蓄積しているかを知ることができますが、高い濃度が検出されたとしても、すぐに健康被害が現れるわけではありません。それでも、時間が経過しても体内から簡単には排出されないため、長期的なリスクが懸念されます。

別のミシガン州の町では、井戸水の汚染が発覚した住民が血液検査を受けたところ、PFASの一種であるPFOSの濃度が全米平均の750倍という衝撃的な結果が出ました。この住民は、かかりつけ医の勧めで追加検査を受けた結果、甲状腺にがんが見つかりました。PFASとの直接的な因果関係は不明ですが、こうした事例は、汚染に直面した人々の不安を象徴しています。

「これはショックですね…。」

全米で広がるPFAS規制の動き

調理器具への規制：ミネソタ州の先駆的取り組み

アメリカでは、PFAS汚染への対応として、さまざまな州で規制が強化されています。特にミネソタ州は、2025年1月からPFASを含む調理器具の販売を禁止する法律を施行しました。これは米国初の試みで、調理器具以外にもデンタルフロス、カーペット、子供向け製品など11種類の消費者向け製品が対象です。この動きは、コロラド州、メイン州、バーモント州など他の州にも広がり、2026年以降、さらなる州が同様の禁止令を施行する予定です。

ミネソタ州が積極的に規制を進める背景には、州に本社を置く化学メーカーによるPFAS汚染訴訟の歴史があります。このメーカーは、2022年にPFAS製造からの完全撤退を発表し、2023年には水質汚染訴訟で公共水道事業者に103億ドル（約1.5兆円）を支払うことで和解しました。この巨額の和解は、PFAS汚染の深刻さと、企業責任の重さを示しています。

業界の反発と科学者の懸念

一方、調理器具の業界団体は、ミネソタ州の禁止令に対して提訴に踏み切りました。業界側は、フライパンなどに使用されるPFASの一種であるポリテトラフルオロエチレン（PTFE）が、食品医薬品局（FDA）によって安全性が認められていると主張します。しかし、科学者たちは、PTFEが廃棄後に飲料水に混入する可能性や、過熱時に蒸気を発生させて呼吸器疾患を引き起こすリスクを指摘しています。実際に、PTFEの製造企業は、ペットの鳥がキッチンで病気になったり死んだりする可能性があるとして、鳥をキッチンに近づけないよう警告しています。

衣料品や食品包装への規制拡大

PFAS規制は、調理器具にとどまらず、衣料品や食品包装にも広がっています。カリフォルニア州とニューヨーク州は、2025年1月からPFASを含む繊維・アパレル製品の販売を禁止しました。コロラド州も、耐水性アウトドアウェアにPFAS使用の表示を義務付け、表示がない場合は販売を禁止しています。また、2024年2月には、FDAがPFASを使用した食品包装容器の販売を中止する方針を発表しました。これらの動きは、他の州や国にも波及する可能性が高いです。

ニューメキシコ州の全面禁止

さらに、ニューメキシコ州は、2027年から調理器具、食品包装、デンタルフロス、玩具製品を対象にPFASの使用を禁止し、2028年には繊維製品、化粧品、家具、洗浄剤なども追加。2029年には、医療機器や半導体など一部の例外を除き、ほぼすべての製品でPFASの使用を禁止する法案を可決しました。この法律では、PFASを含む製品に化学物質の含有を示すラベルの貼付も義務付けられます。これにより、米国でPFASを規制する州は15州に上り、規制の範囲はますます拡大しています。

参照：alterna　PFAS規制、米ミネソタ州はフッ素加工の調理器具も販売禁止に

参照：alterna　米で進むPFAS規制、衣料品にも：25年から一部の州で販売禁じる

参照：alterna　米国でPFAS規制をする州が15に増え、新たに全面禁止の州も

「こういう積極的な取り組みが大事ですね。」

日本の今後の課題と私たちにできること

検査拡大と汚染発覚の可能性

日本では、2026年4月からの水質基準導入に伴い、水道水や地下水のPFAS検査が拡大する見込みです。すでに一部の自治体で基準を超える汚染が検出されており、今後、ミシガン州のような混乱が日本でも起こる可能性は否定できません。PFASは、調理器具、衣料品、化粧品など身近な製品に広く使われているため、汚染が発覚した場合、消費者の不安や生活への影響は計り知れません。

消費者としての意識と選択

PFAS汚染への対策として、消費者一人ひとりができることもあります。たとえば、PFASフリーの調理器具や衣料品を選ぶ、信頼できる水フィルターを使用するといった選択が、体内への蓄積を減らす一歩となります。また、企業に対してPFAS使用の透明性を求める声も重要です。アメリカでは、アパレル企業が新製品からPFASを除去する動きを見せており、消費者の意識が企業の行動を変える力になり得ます。

行政と企業の責任

行政には、迅速かつ透明な情報公開と、汚染地域への支援策が求められます。アメリカの事例では、自治体がFacebookで汚染を発表したり、記者会見を開いたりしたことで、住民が迅速に情報を得られました。日本でも、汚染発覚時のコミュニケーション戦略が重要です。一方、企業には、PFASを使用しない代替素材の開発や、廃棄物管理の徹底が求められます。ミネソタ州の事例では、PFASを使わない焦げ付き防止加工に取り組む企業も出ており、こうしたイノベーションが今後の鍵となるでしょう。

PFAS汚染は、便利さと引き換えに、私たちの健康と環境に大きなリスクをもたらす問題です。アメリカでの事例は、水道水や日常製品に潜む危険と、規制の必要性を浮き彫りにしました。日本でも、2026年の規制強化を控え、国民一人ひとりがこの問題を理解し、行動することが求められます。

「なるほど。」

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まとめ

「いかがでしたでしょうか。アメリカでのPFAS汚染と対応の事例について解説しました。」

「はい。よく分かりました。」